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2001年に放送されたNHKスペシャルドラマ「聖徳太子」(主演・本木雅弘)感想です。





大河ドラマ「徳川慶喜」を見終わった私は、これからはNHKの歴史ドラマを書かれている年代順に見てやろうという遠大な計画を立てました。
その最初の一歩であります(しかしこのあと見なければならない映画が大量に……先は長い)。
主演者が「徳川慶喜」と同じモックンだったのは何かの運命か……武家政治最後の将軍が、日本の精神風土の基礎を築いた古代の皇族政治家に。


まず印象としては、とにかく衣装や建造物や、儀式の再現が凄いということです。
さすがNHK、古代史という超難関においてもぬかりはありません。
儀式の際に顔に模様を描いたり一面白塗りにするのは現代人の目からすると不気味ですが、必ず裏付けのあることでしょうし古代の感覚が直に伝わってきます。
物部守屋との戦いで、守屋のおつきの呪術者たちが呪文を唱えるシーンは古代世界そのものでした。

扮装や大道具小道具といったソフト面と同時に、戦闘描写というハード面もちゃちではありません。
壮大なロケを敢行し、平地での合戦も、森林に潜んでの戦いも緊迫感と迫真性に満ちています。
この時代の武器は当然弓矢ですが、本当にはなっているので弓矢のシーンは見ているだけでひやひやします。

このように、ビジュアル面での演出は非常に高度で、古代世界の神秘性が十分に伝わってきます。
それだけでも一見の価値有りです。
が、肝心のストーリーはどうか。

古代史に関しては、私は教科書的な知識しか有りません。
ただそれでも一通りの知識はあるのですが、それがなければ置いてけぼりで何が何だかわからなかったかも。
視聴者が歴史背景も人物の人となりもわかっている前提でどんどん話が進んでいき、総集編を見せられているかのようでした。

当時は朝鮮半島の方が日本よりもはるかに文明が進んでいたこと、百済からやってきた職人たちは、明治時代の「お雇い外黒人」のような存在であったこと。
蘇我氏の子女は朝鮮半島の言葉を教わり、流ちょうにしゃべることが出来たこと。
新羅や百済というとなんとなく牧歌的なイメージがわいてしまいますが、当時の政治家たちは、現代と変わらない緊迫感をもって国際情勢に対処していたことがきちんと書かれています。

一方で、オリジナルキャラクターである新羅人の伊真という人物も、馬子の娘で厩戸の妻となる刀自古も、厩戸に心酔し、新羅や馬子というそれぞれの主人や父を捨てる。
しかし、なぜ彼らがそこまで思うのか。
モックン厩戸の美貌と神秘性、それに相手が聖徳太子なのだからさもありなんという先入観によって何となく受け入れてしまうのだが、冷静に考えれば描写不足は否めない。

内容自体は牧歌的なものではありません。
冒頭まもなく皇族同士のレイプ未遂、謀略殺害。

しかし行為自体は陰惨で激しいのですが、それでも古代の雰囲気の演出と役者の名演技によって、どこか神話の世界を見るような超現実的な空気をかもしているのが凄いところ。

その後も史上唯一の天皇殺害である「崇峻天皇暗殺」も真っ向から書く。
大河ドラマ「太平記」も企画にあたって天皇家を書く困難さが危惧されたそうですが、このドラマのタブー侵犯度は桁外れです。
そもそも「太平記」もこの「聖徳太子」に始まる古代史三部作も、脚本家はすべて池端俊策氏でした。

斑鳩宮を造営中に刀自古が生まれたばかりの息子である山背大兄皇子(まだ赤ちゃん)を連れてきて和気藹々としているのは、もちろん脚本家はわかっていて書いているのだろうけどこの後の展開を考えると悲しい。

蘇我馬子は、過食症だったり
「戦を止めたければ私を刺せ」
といって厩戸に剣を渡したり、病んだ感じのキャラに書かれています
一応物部守屋を殺した良心の呵責という原因が書かれているけど、唐突な印象を受けます。
伊真の感情も、妻子親兄弟を殺された恨みが厩戸に一言言われただけでとりあえずは抑えられてしまう。
役者の演技と格調高い雰囲気で説得力を持たせてはいるものの、ドラマというより教育テレビの歴史番組風。

馬子の老かいさや屈折ぶりの表現など光るものはあるのだが、とにかく尺が足りない。
ドラマは厩戸の少年時代から、来目皇子死亡の603年で終了しています。
聖徳太子は622年に49歳で死去するので、後半19年は書かずということになります。
しかしそれでも、ダイジェスト風になってしまっている。
太子の事蹟のみならず、当時の国際情勢と朝廷内の複雑な人間関係も書かなくてはならないのですが、それらはとても3時間では書ききれない。

厩戸の弟の来目皇子はヤマトタケルのモデルともいわれる人で、丹念に書けば相当ドラマチックになると思うけど、これもポイントだけ描写してあっさり退場。

厩戸と馬子の対立は、敵対意識が芽生える所だけ書いてそこからいきなり時間が飛んで、厩戸の髪型も変わり
(古墳時代風のみずらが奈良時代風の束髪に変わることで時代の変化を表しているというのはわかるけど)
来目暗殺。

馬子がよくわからない理由で来目を暗殺、馬子と厩戸が真剣を抜いて殺し合おうとするトンデモ展開。

そこまでして
「戦を阻んで阻んで阻んでみせる!」
と馬子に言う厩戸。
いくら仏法の守護者でも、聖徳太子は現実を生きる政治家で、ここまでかたくなな非戦論者ではなかったと思う。
刀自古も推古天皇も後半では消えて消化不足。

大河ドラマのDVDと異なり、特典映像がつくのが嬉しい。
2001年のテレビドラマなのに、画面のアスペクト比が地デジ時代のそれだ……と思ってたら、特典映像はアナログ時代のアスペクト比でした。
儀式のシーンで巫女が木の枝を振る仕草にも、古代らしさが出るように演技指導しているのだなと感動しました。

以上のように、当時の歴史状況をある程度知っていないとわかりにくいものはありますが、その上でであればとても面白い。
何より古代の息吹をダイレクトに感じることができる希有なドラマであると思うので、一度見て損はないと思います。
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